【主張】拉致被害者 救出へ猶予は許されない

 北朝鮮による拉致被害者、家族の高齢化が進んでいる。

 拉致被害者、曽我ひとみさんの夫、チャールズ・ジェンキンスさん(77)と増元るみ子さんの母、信子さん(90)が相次いで亡くなった。

 信子さんの死去により政府が認定する未帰国の拉致被害者の親で生存しているのは、横田めぐみさんと有本恵子さんの両親だけとなってしまった。

 理不尽にも国家犯罪によって奪われたわが子を、親の手に戻してあげるため、もはや一刻の猶予もならない。政府は拉致被害者の全員帰国に向けて、全力を挙げなくてはならない。

 2人の訃報に接し、拉致被害者家族会の飯塚繁雄代表は「帰国を待つ家族も親族も日ごとに衰弱していく。日本政府は拉致問題が解決しないまま過ぎていく時間を重く受け止めてほしい」と話し、菅義偉官房長官は「痛恨の極みだ」と述べた。

 折しも国連安全保障理事会は北朝鮮の人権問題を討議する会合を開き、日米英仏伊のほか、スウェーデン、ウクライナなどが演説で日本人の拉致問題に触れて北朝鮮を非難した。国際世論の高まりは歓迎したい。

 これに対して北朝鮮の国連代表部は声明を発表し、「存在しない人権問題が取り上げられ、議論された」と強く反発した。拉致は、金正日総書記が認めて謝罪した国家機関による犯罪である。国際社会からの非難に耳を貸そうとしない姿勢は異常である。

 看過できないのは、会合に先立って開催の是非をめぐる採決が行われ、中露、ボリビアの3カ国が「安保理は人権問題を扱う場所ではない」などとして反対したことである。日米など10カ国の賛成で会合は開催されたが、中露の反対は理解し難い。拉致は現在進行形の国家犯罪である。そこまで擁護したがる理由は何なのか。

 核・ミサイル問題をめぐる制裁でも、両国がその実効性を妨げてきた。政府は対中、対露外交でも積極的に拉致問題解決への協力を強く訴えるべきだ。

 信子さんの夫、正一さんは、曽我さんら5人の拉致被害者が帰国した2日後に亡くなった。家族には「わしは日本を信じる。おまえも日本を信じろ」と言い残したのだという。政府には、この言葉に応える責務がある。

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