黒人の歴史彩る「マンボソース」 「ワシントンの味」が浸透する一方、郊外に追いやられる黒人コミュ二ティ

 ワシントンは「黒人の町」だ。米国南部の人種隔離政策などを嫌い北部に逃れた多くの黒人が定着し、1950年代後半~2011年は黒人の人口が町の総人口の過半数を占めてきた。現在も人口約68万人の約47%が黒人で、独特の文化を形成している。

 そのうちの一つが、知る人ぞ知る「マンボソース」と呼ばれる調味料だ。

 黒人が多く住む地区にある庶民的な店で料理を頼むと、このソースが添えられて出てくることが多い。店によって味は違うのだが、基本はケチャップまたはトマトペーストに砂糖、酢、とうがらし、蜂蜜などを混ぜて煮詰めたもののようで、その甘酸っぱさが素揚げの手羽先などによく合う。

 私も最近になって近所の中華料理店で出合うまで知らなかったのだが、気をつけてみていると、市内の高級レストランでもメニューに取り入れる所が出始めた。いわゆる「名物」が少ないワシントンの新しい売り物になればよいと思う。

 一方で気がかりなこともある。市内の黒人地区は近年、再開発で家賃が上がり、住民らは郊外に追い立てられている。黒人のソウルフードであるマンボソースが白人社会にも浸透する一方、ソースを生んだ黒人コミュニティーが解体に向かっているとすれば、本末転倒であるような気もする。(黒瀬悦成「ポトマック通信」)

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