【産経抄】拘束された改革派の富豪王子 11月7日

 中東のサウジアラビアは、世界で唯一女性の車の運転が禁じられてきた。女性が自由に外出するようになると、男女関係が乱れる。これが社会で大きな影響力を持つイスラム教の保守派聖職者の主張である。

 ▼ところがサルマン国王(81)は今年9月、来年6月までに運転を解禁するよう命令を出した。サウジは近年、原油価格の低迷によって財政難に苦しんでいる。国王の息子のムハンマド皇太子(32)は、石油に依存しない経済改革を進めている。運転解禁も女性の社会進出を促すという意味で、皇太子の意向が強く働いた。

 ▼この決断に誰よりも大きな拍手を送ったのが、ワリード王子(62)であろう。女性運転手がいないサウジには、すでに女性パイロットが誕生している。飛行士を夢見る少女を隣国ヨルダンの飛行学校に留学させたのは、王子である。免許を取得すると、私有するジェット機の操縦士として採用した。宮廷政治を否定するような発言も注目を集めてきた。

 ▼そんなサウジから不穏なニュースが入ってきた。政府が王子11人を含む数十人の身柄を拘束したという。そのなかに、改革への志は皇太子と共通しているはずのワリード王子も含まれている。

 ▼王子は米国留学を経て、父親から借りた3万ドルを元手にビジネスを始めた。米シティバンクやアップルなどへの投資が成功して、今では世界有数の資産家である。かつて、トランプ米大統領から高級ヨットを買い叩(たた)いた。そのトランプ氏とは、イスラム教徒の入国禁止をめぐってツイッターで激しい非難の応酬を繰り広げた。

 ▼約5000人いる王族のなかで、とびきりのやり手であることは、間違いない。権力の集中を進める皇太子にとって、目障りな存在ということか。

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