【主張】危険運転致死傷罪 常識に沿う不断の改正を

 法律は生き物である。そのありようが国民感情や常識に沿わず、時代に合わないなら、改正を躊躇(ちゅうちょ)すべきではない。不断の見直しが必要だ。

 神奈川県の高速道路で6月、追い越し車線に停止した一家のワゴン車に大型トラックが追突し、2人の娘の目の前で夫婦が死亡した。

 執拗(しつよう)なあおり運転や前方に割り込んでの減速でワゴン車を停車させた乗用車の男を、横浜地検は危険運転致死傷罪などで起訴した。男は神奈川県警に過失運転致死傷などの容疑で逮捕されていた。

 過失運転致死傷罪の法定刑の上限は懲役7年であるのに対し、危険運転致死傷罪は懲役20年で、裁判員裁判の対象となる。横浜地検は県警の逮捕・送検容疑より重い罪での起訴を選択した。

 起訴を受け、両親を失った小学6年の次女は「悪いことをしたのに、なぜ、軽い罪になってしまうのか、重い罪で処罰してもらいたいとずっと思っていました。(被告には)二度と運転してもらいたくないです」とコメントした。これが率直な遺族感情であろう。

 パーキングエリアで駐車位置を注意されたことに腹を立てた男の妨害行為は、明らかに「悪質な故意」によるもので、不注意を意味する「過失」を冠した罪名の適用はそぐわない。

 一方で危険運転致死傷罪は、運転中の事故を想定したものだ。横浜地検は「危険な運転態様と事故の因果関係が十分認められると判断した」と説明するが、停車後の事故への適用は拡大解釈との指摘もある。公判の行方は不明だ。

 危険運転致死傷罪は平成13年、東名高速で飲酒運転のトラックに追突されて女児2人が死亡した事故などを契機に、刑法に新設された。26年には刑法から交通事故関連規定を分離した自動車運転処罰法が施行され、その適用対象が広げられた。

 いわば、時代と国民感情の要請で新設され、整備を重ねた法律である。法の網からこぼれる事案があるなら、これを埋めるべく法を改正すべきである。

 あおり運転や幅寄せ、割り込みなどは、身近な恐怖である。いつでも重大事故につながり得る。そうした悪質な行為が事故を引き起こした場合、重い罰から逃れられないことを、知らしめなくてはならない。その警鐘を、事故の抑止に役立てたい。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ