【主張】TPP11 この機を逃さず合意図れ

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の発効を目指す11カ国の折衝が大詰めを迎えている。今月上旬のベトナムでの閣僚・首脳会合で、政治決着を目指すという。

 米国が離脱したとはいえ、TPPが日本経済の成長に欠かせぬ基盤となり得ることに変わりはない。保護主義の台頭を許さず、自由貿易を推進するためにも、この機を逃さず、目標である大筋合意を果たしたい。

 域内大国として「TPP11」の早期発効を各国に働きかけてきた日本の役割は特に大きい。いたずらに結論を先延ばしせず、11カ国の結束を促すよう、リーダーシップを発揮しなければなるまい。

 千葉県浦安市で開かれた首席交渉官会合では、米国離脱に対応して実施を棚上げする凍結項目を絞り込んだ。米国の要求で盛り込まれた、医薬品データの保護規定などの凍結で一致している。

 会合前には、ニュージーランドで政権交代があり、一部項目の凍結よりも、時間を要する再交渉を求める意向を示していた。大きな懸念材料だったが、新政権はその後、柔軟姿勢に転じた。

 ベトナムが繊維製品の関税撤廃を制限する原産地規則の見直しを求めるなど、各国の主張には隔たりも残っている。これらは閣僚や首脳の政治判断に委ねられた。

 通商協議で国益が衝突するのは当然である。だが、関税撤廃にとどまらず、知的財産や電子商取引などの幅広いルールを明記したTPPの成果を無にするわけにはいくまい。各国は、大局的な観点に立って歩み寄りを図るべきだ。

 もとより、TPP11には将来的な米国の復帰を可能にする受け皿としての意味もある。トランプ政権は、多国間の枠組みよりも2国間で協定を結んだ方が自国に有利だと考えてTPPを離脱した。

 11カ国が意見をまとめられなければ、米国に復帰を促すどころではない。むしろ、足元をみた米国が日米自由貿易協定(FTA)の交渉入りを強く求める可能性がある。安倍晋三首相は、これを念頭に置いて、トランプ大統領と経済問題を話し合う必要がある。

 TPPは、経済、軍事両面での中国の覇権主義的傾向を牽制(けんせい)する戦略的意義を併せ持つ。11カ国の交渉が停滞すれば、TPPを自国包囲網と警戒してきた中国の存在感が、域内で一段と高まることも指摘しておきたい。

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