【主張】津波防災 「迷わず避難」を次世代に

 11月5日は「津波防災の日」、そして国連が制定した「世界津波の日」である。

 安政元(1854)年の旧暦11月5日に起きた安政南海地震の際、多くの人命を津波から救った「稲むらの火」の逸話に由来する。

 2011年3月の東日本大震災では、1万8千人を超える人が津波の犠牲になった。04年12月のインド洋大津波の犠牲者は22万人にのぼる。

 災害の中でも最も多くの犠牲者を出すのが津波である。その脅威と教訓を風化させることなく、命を守るための「避難」の大切さを心に刻み、世界に発信する日としたい。

 皇后さまは平成11(1999)年のお誕生日に際し、「稲むらの火」について話された。

 「子供のころ教科書に、確か『稲むらの火』と題し津波の際の避難の様子を描いた物語があり、その後長く記憶に残ったことでしたが、津波であれ、洪水であれ、平常の状態が崩れたときの自然の恐ろしさや対処の可能性が、学校教育の中で具体的に教えられた一つの例として思い出されます」

 災害の伝承と防災教育の大切さが込められたお言葉に「津波の日」の意義は集約されている。

 津波から命を守る方法は「避難」しかない。東日本大震災やインド洋大津波のような巨大津波の頻度は数十年、数百年に1度であるからこそ、「迷わず逃げる」という意識を持ち続け、次世代に継承していくことが大事だ。

 昨年11月に起きた福島県沖の地震では、東北・関東の太平洋岸に津波警報、注意報が発令された。東日本大震災を思い出し、すぐに避難した住民もいる。一方で「避難を見合わせた」という住民も少なくなかった。東北大などの調査によると、注意報から警報に切り替わった宮城県石巻市では「避難しなかった」住民が6割近くにのぼったという。

 大震災の記憶を忘れたはずのない被災者でさえ「大きな津波はこないだろうと思った」「情報収集を優先した」などと、逃げない理由を作ってしまうのだ。

 「迷わず逃げる」ことの3つの意味を再確認しておきたい。

 第1は自分の命を守るため。第2に救助活動などで周囲の人を危険にさせないため。そして第3は避難行動を継承し、次の世代の命を守るためである。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ