【主張】米通商法301条 「恫喝」では理解得られぬ

 トランプ米大統領が通商代表部(USTR)に対し、通商法301条に基づく制裁措置を視野に入れて、中国による知的財産侵害の実態を調査するよう命じた。

 中国の不公正な法制度や商慣習が米国に著しい被害をもたらしているという理由である。一方的な報復を可能とする国内法を活用し、中国に強く圧力をかける狙いだろう。

 だが、これは極めて危険な手法である。301条に基づく制裁に踏み切れば、一方的な輸入制限を禁じる世界貿易機関(WTO)ルールから逸脱する恐れがある。

 日本は米国との経済対話などの場を通じ、自制的な対応を促すべきである。

 国際ルールよりも国内法を優先させ、自らの意に従わぬ貿易相手国には制裁をちらつかせて恫喝(どうかつ)する。いったんそれに手を染めてしまえば、米国は日本を含む世界に同様のやり口を講じかねない。

 各国が対抗措置を取れば、報復の連鎖となる。それにより、世界の貿易が停滞に向かうことを強く懸念する。

 301条は、調査によって「クロ」と判断した上で中国側が改善に応じなければ、関税の引き上げなどの制裁措置を一方的に発動できる仕組みである。調査には1年程度の時間がかかるとされる。

 米国がこの時期に中国の知財問題を取り上げたことには、北朝鮮の核開発を抑えるため、中国の積極的な関与を促す狙いも指摘される。だが、それ抜きでも中国に改革を迫る意義は大きい。

 中国による特許権や商標権の侵害、海賊版の横行などが目に余るからだ。中国に進出した外資系企業に対し、技術移転が強要されたことも指摘されてきた。それらの実態をあぶり出し、知財を保護することは日本にも有益である。

 本来これは、日米欧が結束して対処すべき課題である。

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)で明確化したルールを世界に広げて中国の知財侵害を封じる圧力とする。その中心的役割を担うべきなのに、TPPを離脱したうえ独善的に振る舞えば、国際社会の理解は得にくい。

 米国が検討する鉄鋼製品の輸入抑制策も同じだ。問題の根本には中国による過剰生産がある。日欧が懸念する保護主義に陥るのではなく、協調して対処することが必要である。

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