【産経抄】すり替えるな「1984年」の内容 4月21日

 上空を飛び交うヘリコプターや室内のテレビが、人々の行動を常に見張っている。独裁体制にとって危険な人物と決めつけられると、「思考警察」に逮捕され、存在自体が抹消される。

 ▼英国の作家、ジョージ・オーウェルが1949年に発表した近未来小説『一九八四年』が、再びブームとなっている。オーウェルの頭の中には、スターリン体制下のソ連があった。もっとも今、国民を徹底的に監視する社会が実現しているのは、中国である。

 ▼昨日の石平さんのコラム「チャイナ ウオッチ」を読んで、背筋が寒くなった。今月10日に制定された規則は、一般市民によるスパイ行為の通報を奨励しているという。共産党政権が、すでに監視システムを使って全国民を見張っているのは、周知の事実である。

 ▼驚いたことに、『一九八四年』をもって現在の日本に警鐘を鳴らす人たちがいる。政府が今国会での成立を目指す「テロ等準備罪」の法案は、オーウェルが描いたような監視社会を招くというのだ。安倍晋三首相は、「実行準備行為があって初めて処罰の対象にする。内心を処罰することではない」と明言している。的外れの批判でしかない。

 ▼当然ながら昭和59(1984)年、『一九八四年』は大いにもてはやされた。ただ故渡部昇一さんは、ブームには冷ややかだった。オーウェルが描いたのは、共産主義体制である。にもかかわらず多くの文化人は、管理社会への警告にすり替えようとしていた。

 ▼渡部さんは当時の正論欄にこう書いた。「オーウェルが書いたのは当時の、そして今のソ連や、それと類似の体制の国家なのであって、今の日本などでは絶対にない」。「ソ連」を「中国」に置き換えれば、現在でも通用する。

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