【主張】裁判員判決の死刑 制度定着へ執行は粛々と

 平成21年の裁判員制度導入時、2つの困難なハードルが想定された。

 一つは、国民参加による評議で死刑を選択できるかという懸念だった。だがすでに裁判員裁判で死刑判決を受けた被告は26人を数え、7人の刑が確定していた。

 裁判員らが真摯(しんし)に罪と向き合い、法を吟味して熟慮を重ねた結論である。真面目で勤勉な国民性が懸念を乗り越えさせたといってもいい。

 もう一つは刑の執行に際し、評議に参加した裁判員がその事実に耐えられるかという心配だった。人の生死に関わることに心的負担が小さかろうはずはなく、その軽減に向けた取り組みは必要である。それでもおそらく国民はこのハードルも乗り越えるだろう。

 厳刑をもって償われるべき罪はある。裁判員らが難しい評議に苦しみ抜いて判断した結論は尊重されるべきである。制度定着のためにも、刑は粛々と法に基づいて執行されることが望ましい。

 18日、裁判員裁判で判決を受けた死刑囚の刑が執行された。岩城光英法相は「裁判官と裁判員が慎重な審理を尽くし、死刑を言い渡したと思っている」と述べた。

 確定判決によると、死刑囚は21年5月、川崎市内のアパートで、大家と弟夫婦の3人を刺殺した。横浜地裁の裁判員裁判は23年6月、死刑判決を言い渡し、弁護側は東京高裁に控訴したが、同年7月に死刑囚自らが取り下げ、死刑が確定していた。

 刑事訴訟法は、判決の確定から6カ月以内に法務大臣の命令により死刑を執行すると定めている。法相は職務を遂行したにすぎない。民主党政権時には4代の法相が執行ゼロを続けたが、これは職務放棄に等しかった。

 今回の死刑執行にあたり、裁判員裁判の対象から死刑求刑の事件を外すことや、死刑そのものの撤廃に結びつける議論もある。

 だが、国民の司法参加によりその日常感覚や常識を判決に反映させることを目的とした制度の趣旨に照らせば、重大事件こそ裁判員裁判の対象とすべきだろう。

 加えて内閣府が今年1月に公表した世論調査によれば、死刑を「やむを得ない」とする容認は80・3%にのぼり、「廃止すべきだ」の9・7%を大きく上回っている。死刑判決や執行の背景に、こうした国民の声があることも忘れてはならない。

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