【正論】家族の絆守る「夫婦同姓」合憲 日本大学教授・百地章

 「夫婦別姓」と「女性の再婚禁止期間」の是非をめぐって、最高裁大法廷の判断が注目されていたが、判決はいずれも予想通りの妥当なものであった。

 ≪意義や合理性を積極的に評価≫

 夫婦別姓問題は、事実婚の夫婦らが「憲法13条、24条は夫婦別姓の権利を保障しており、国会が正当な理由なく長期にわたって民法を改正しない立法不作為は違憲・違法である」と主張して国に損害賠償を求めたものだが、最高裁は原告側の主張を退けている。

 判決は、原告らの主張する、結婚に伴う改姓によってアイデンティティーの喪失感を抱いたり、結婚までに築き上げてきた社会的地位との連続性が失われるといった不利益も否定できないとしつつ、憲法13条の「個人の尊重」や24条の「婚姻の自由」は夫婦別姓の権利まで保障したものではないとして、原告らの主張を退けた。それだけでなく、判決は夫婦同姓の意義や合理性について積極的に言及している。

 それによれば、氏〔姓〕には、「家族の呼称としての意義」があり、その呼称を「一つに定めることには合理性がある」。また、「家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位」であって、全員が「同一の氏〔姓〕を称することにより家族という一つの集団を構成する一員であることを実感することに意義を見いだす考え方も理解できる」。さらに、夫婦同姓であれば、その子も両親と「氏を同じくすることによる利益を享受しやすい」。

 ≪国会に指針示した最高裁判決≫

 この点、2審判決は内閣府の世論調査をもとに「国民意識の根底には、現在の夫婦同氏〔姓〕制度が家族の一体感の醸成に寄与しており、これを維持するべきであるとする意識があるように推察される」と述べており、最高裁判決にはやや物足りないところもある。しかし夫婦同姓制の意義にまで踏み込み、積極的にそのメリットに言及した点は高く評価できよう。

 判決は、希望する者にのみ別姓を認める「選択的夫婦別姓制」の是非を含め、「この種の制度の在り方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならない」と述べている。これをもって、最高裁は選択的夫婦別姓制に格別な理解を示したとか、夫婦の姓の在り方について最高裁はあげて国会の判断に委ねたとみる向きもあるが、それは早計だろう。

 確かに、憲法24条は、婚姻や家族については「個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して」法律で定めることになっており、その在り方を国会に委ねていることは間違いない。

 しかし、最高裁は、前述のように憲法13条は「氏の変更を強制されない自由」まで保障したものではなく、夫婦同姓制は憲法24条にも違反しないこと、さらに憲法14条1項の「法の下の平等」との関係についても、民法750条は夫婦がいずれの姓を称するかはその「協議」に委ねており、「文言上性別に基づく法的な差別的取扱いを定めているわけではない」ことを理由に、夫婦同姓制は違憲ではないとした。

 このように、最高裁は夫婦別姓論者の主張をことごとく退けただけでなく、夫婦同姓制の意義や合理性にまで積極的に言及していることは、既に述べたとおりである。加えて「夫婦同氏〔姓〕制は、婚姻前の氏を通称として使用することまで許さない」ものではないとして「通称」をあげ、夫婦別姓論者の不利益は「氏の通称使用が広まることにより一定程度は緩和され得る」と指摘している。

 以上からすれば、最高裁は夫婦別姓問題について新たに独自の憲法判断を行い、国会に立法裁量の指針を示したとみるのが自然であって、決して国会に「白紙委任」をしたわけではない。

 ≪憲法に「家族保護」の規定を≫

 しかも平成24年の内閣府調査によれば、自ら夫婦別姓を希望する国民はわずか8%である。つまり国民の大多数は夫婦同姓制を肯定している。そのような中で明治以来、120年近い伝統を有し「我が国の社会に定着してきた」夫婦同姓制という、わが国の姓に関する基本ルールをなし崩し的に変更してしまうのは問題であろう。

 国際社会では「社会の基礎は個人ではなく家族である」というのが常識であり、「家族を国が積極的に保護」しようとしている。例えば、国際人権規約(A規約)では「できる限り広範な保護及び援助が、社会の自然かつ基礎的な単位である家族に対し、…与えられるべきである」(第10条1項)と述べ、ドイツ憲法も「婚姻および家族は、国家秩序の特別の保護を受ける」(第6条1項)と定めている。西修・駒沢大学名誉教授によれば、1990年以降に制定された世界102カ国中、87の憲法には「家族保護」の規定がある。

 「家族の絆」を破壊しかねない夫婦別姓論を持ち上げる風潮がマスメディアの間に瀰漫(びまん)している中、今こそ憲法に「家族の保護」を明記し、国や社会の手で積極的に家族を保護していく必要があるのではなかろうか。(ももち あきら)

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